6. 実験結果 - RISによる分光測定
パルス炭酸ガスレーザーを光源として大気の分光測定を行いました。分光測定では、ADEOS衛星の進行に伴うドップラーシフトを利用しました。反射光のドップラーシフトは近似的に、Df = (2vf/c) cos q で表されます。ここに、v は衛星の速度、f はレーザーの周波数、q は地上局から見た衛星の仰角です。ADEOSの速度は毎秒 7 km なので、ドップラーシフトの大きさは仰角に依存して、0-1.3 GHz (0-0.04 cm-1)です。
Figure 6-1 はこの方法で測定した大気のスペクトルです。2台の炭酸ガスレーザーはそれぞれ13CO2同位体の発振線10R(24) と 12CO2 の9P(24) に同調しました。図の横軸はレーザーのショット番号で、反射光の波長に対応します。図の縦軸は2台のレーザーに対する信号の比の対数で、吸収を表しています。図にみられる吸収は12CO2 9P(24) のレーザー光が受けたオゾンの吸収です。Fig. 6-1 の下の図はHITRAN データベースとUS標準大気のオゾンプロファイルを用いて計算したシミュレーション結果です。両者はよく一致しています。しかし一方で、測定誤差が予想よりも大きいという問題点が明らかになりました。

Fig. 6-1 (上)RIS を用いて測定したスペクトルと
(下)計算機シミュレーション
RISによるオゾン測定を検証するために、東北大学との協力によりヘテロダイン分光計による検証観測を通信総合研究所において同時に行いました。RISで得られたオゾンの全量はヘテロダイン分光計の結果と良く一致しました。また、ADEOSに搭載された TOMS によるオゾン全量とも良く一致しました。
RIS測定の誤差の問題について解析の結果、2台のレーザーのビームパターンの違いが誤差の原因であることが明らかになりました。この結果に基づいて、送信光学系にレンズとピンホールから成る空間フィルターを追加して送信光学系を改良しました。この結果、測定誤差は約5分の1に低減され、受信信号の比のSN比として約10 が得られました。
7. 実験結果 - RISのレーザー測距によるADEOSの軌道決定
8. 今後の展望
9. 成果発表リスト
1. Outline of the RIS Experiment
2. ADEOS搭載RIS
3. RIS実験地上システム
4. 実験結果 - RISの能動追尾
5. 実験結果 - RISの光学特性
ホームページへ