Retroreflector in Space (RIS) Experiment
1. RIS 実験の概要
ADEOS衛星に搭載されたRIS(Retroreflector in Space) は地上衛星間のレーザー長光路吸収法による大気微量分子の測定実験のための大口径のレーザーレトロリフレクターです。レーザー長光路吸収法はレーザーを大気中の長い光路を透過させて吸収を測定することによって大気に含まれる分子の濃度を測定する手法で、感度の高い手法として知られています。RISを用いた実験はこの手法を地上と人工衛星の間で最初に行ったものです。
RISを搭載したADEOS衛星は1996年8月16日に打ち上げられました。RISを用いた実験は、環境庁国立環境研究所と郵政省通信総合研究所が協力して、東京都小金井市にある通信総合研究所の大型の衛星光学追尾施設からレーザーを発射し、反射光を同じ望遠鏡で受信することによって、大気の吸収スペクトルの測定が行われました。国立環境研究所がこの実験のために開発した狭帯域のパルス炭酸ガスレーザーを光源として、10ミクロン帯の波長でオゾンの吸収スペクトルを測定し、カラム量を求めることに成功しました。
RISを搭載したADEOS衛星は、大変残念なことに太陽電池パネルのトラブルにより1997年6月30日に運用停止となり、RISを用いた測定実験も中断されました。ADEOS運用停止のために、当初計画していた大気観測実験を完全に実施することはできませんでした。しかし、地上衛星間のレーザー長光路吸収に基づく計測手法を実証し、この計測技術に関する有用な基礎データを得ることができました。
また、世界の衛星レーザー測距局の協力により、RISを用いたレーザー測距によるADEOSの軌道決定、軌道予測の研究が宇宙開発事業団と通信総合研究所、海上保安庁水路部で行われ、従来の電波による方法に比べて約一桁高い精度の軌道予測が行えることが実証されました。この他、RISを使った2波長レーザー測距の研究がNASAとドイツで行われました。

Fig. 1-1 RIS 実験の概念
2. ADEOS搭載RIS
3. RIS実験地上システム
4. 実験結果 - RISの能動追尾
5. 実験結果 - RISの光学特性
6. 実験結果 - RISによる分光測定
7. 実験結果 - RISのレーザー測距によるADEOSの軌道決定
8. 今後の展望
9. 成果発表リスト
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