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正多面体を構成する正多角形を分割して、新たに外接球上に頂点を設けることによって、球に近い多面体を作ることができます。
4.1 正二十面体を基礎とする多面体
写真11は正二十面体を構成する正三角形を4つに分割したものです。
写真11
図4−1は分割した部分の設計図です。ここでは、外接球の半径を1としています。これを20組作って、貼り合わせれば写真の多面体ができあがります。
図4−1
これを設計するためには、少し計算が必要です。簡単に計算するためにはまず正二十面体の12の頂点の位置を重心を原点とするベクトルで表します。次に、各辺の中点を通って外接面に接するベクトルを計算します。最後に隣り合うベクトルの差を計算して、新しい辺の長さをそれぞれ求めます。計算は全ての頂点について行う必要はもちろんなく、図4−1の範囲で計算すれば十分です。
写真12は正二十面体を構成する正三角形を9つに分割したものです。設計図を図4−2に示します。この場合、もとの正三角形の各辺を3つに分割していますが、この分け方には任意性があります。ここでは、新しい辺の長さが互いに等しくなるように分割しています。写真12を見るとこの多面体はサッカーボールの正五角形と、正六角形の中心に外接球に接する頂点を設けたものと似た形をしていることがわかります。写真12の形では六角形の方が少しゆがんでいますが、これは先ほどの任意性によるものです。
写真12
図4−2
余談ではありますが、この多面体をよく見ると、提携関係にあったクライスラーと三菱自動車のマークが合体して見えます(図4−3)。
図4−3
正十二面体を基礎としても同様の多面体を設計できます。写真13は正十二面体の正五角形のそれぞれを20の三角形に分割したものです。この、設計図を図4−4に示します。
写真13
図4−4
これと同様の形は気象観測用のレーダーのドームに良く用いられているようです。
正六面体、正八面体から出発して、球に近い形を同様の方法で作ることもできます。写真14、15はこのような形の例です。写真14は正六面体の各面の中点に新たな頂点を設けたもの、写真15は正六面体の各面の中点と各辺の中点に新たな頂点を設けたものです。後者の場合、多面体の各面は三角形ではなくて四角形になります。
写真14
写真15
最後に、参考までに直交座標で表した正二十面体と正十二面体の頂点の方向を表4−1と4−2に掲げておきます。