レーザー長光路吸収システムの将来展望

 大気微量分子を実大気中で遠隔操作する手法のなかで、レーザー光を長い光路を透過させて吸収測定するレーザー長光路吸収法は、原理的に感度のもっとも高いものです。地上衛星間レーザー長光路吸収分光法は、地上と衛星の間でレーザー光を伝播させて大気微量分子の高度分布またはカラム量を測定する手法です。この手法は通常の衛星搭載センサーとは異なり、空間的に連続したグローバルなカヴァレッジが得られる訳ではありません。むしろ地上観測の概念の延長にある観測手法と言えます。しかし、地上衛星間レーザー長光路吸収分光法は他の手法で得られない高い感度が期待される点に大きな特徴があります。
 一般に、オゾンなどの高層大気中の微量分子の観測では太陽光の吸収や大気の放射を利用した受動的方式の衛星センサーが有効です。既に、これまでにも数多くの成果が得られています。しかし、酸性雨や温暖化などの対流圏の大気化学に関連する多くの微量分子については受動的な方式は必ずしも有効とはいえません。このような対流圏の測定の限界を突き破る新しいアプローチとしてレーザーを光源とする地上衛星間の長光路吸収測定に期待しています。例えば、地上衛星間レーザー長光路吸収分光法では、対流圏のバックグラウンドレベルのNO、NO2、SO2など、他の手法では困難な分子のカラム量の観測も可能です。
 地上衛星間レーザー長光路吸収分光法には、ADEOS搭載RISのように、低軌道衛星に搭載したリフレクターを用いる方法と、衛星に検出器システムを搭載する方法があります。前者は搭載機器が簡単である利点がありますが、反射光を地上で受信するための大口径の追尾望遠鏡が必要となります。これに対して、衛星に検出器を搭載する方法では、レーザー光を衛星上で受信し、データを電波で地上に伝送するため、地上局には口径の小さい送信システムのみで良く、静止軌道衛星を利用すれば衛星の追尾も簡単になります。また、レーザーパワーも小さくできます。これによって、地上のシステムは大幅に小型化することができます。将来、多数の地上レーザー局と静止軌道衛星から構成されたレーザー長光路吸収分光システムが、対流圏の定常的な大気微量分子監視システムとして重要なものとなる可能性を持っています。
 RIS計画は観測データそのものの意義だけでなく、このような将来の観測システムのための技術的な基礎データを得るという面でも重要な意味を持っています。

参考文献

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