5月18日から22日の時間高度表示(THI)(鵜野さんのモデルとの比較)
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図上は距離補正信号強度(レーザー波長は532nm)で、近似的に後方散乱係数に比例。簡単に言えば、光学的に見た全エアロゾル濃度を表す。(上の方の強い信号は雲です)
図左下は偏光解消度(532nm)で散乱体の非球形性を表す。雲のところで偏光解消度が高いのは氷雲であることを表している。雨も偏光解消度が高い。エアロゾルの部分について言えば、偏光解消度はミネラルダストの含まれる割合のようなものを表している。
図右下は波長1064nmと532nmにおける信号強度の比を表している。この比の値は粒径が大きいほど大きい。(雲粒ほど大粒子になると波長依存性はなくなって1になる。)偏光解消度、波長依存性いずれも濃度を表すものではないので、例えば、黄砂の濃度を見るには、偏光解消度(図左下)と強度(図上)を掛け合わせたような量を考える必要があるので注意。(色に惑わされないように。)
上の図から、まず、21日の昼ごろにエアロゾル濃度の高い気塊がみられる。また、19日から21日にエアロゾルの高い気塊が降りてくるような傾向もみられる。偏光解消度(図左下)で、21日、22日に、高度2kmから4kmくらいの間でダストの割合が多いことがわかる。21日の12時頃の気塊の下の方は黄砂ではない。一方、図右下の2波長の比を見ると、黄砂の飛来している領域で比の値が大きく、ダストの粒径が大きいことと整合している。また、大気境界層の中でも比の値が大きく、粒径の大きい海塩粒子の散乱の寄与が大きいためであると考えられる。大気境界層の中の海塩は液滴であると考えられ、偏光解消度は小さい。
一方、鵜野さんの予報を見ると、飛来している黄砂と硫酸塩について、少し時間は違うかもしれないがパターンは定性的に合っている。
今回のライダーデータで注目すべきことは、(表示の色のどぎつさもあるが、)偏光解消度よりも2波長の比の方がより鮮明に黄砂を捉えているように思われることである。これは、輸送の過程で黄砂の表面がぬれるなどして偏光解消度が小さくなったためかもしれない。北京の黄砂の偏光解消度は40パーセントにも達するのに、ここで観測された偏光解消度は十数パーセントにすぎない。2波長の比は際立って大きいことから考えて、硫酸塩と混ざったことだけでは説明できない
いずれにしても、今回の観測結果は、2波長(多波長)のライダー測定がダストの識別にも有用であることを示している。偏光解消度と組み合わせて、黄砂エアロゾルの輸送中の変質を捉えることの可能性をも示すものである。しかし、海塩粒子の多い海洋大気境界層中の黄砂エアロゾルは、偏光解消度でも、波長依存性でも捉えることが難しいことも今回の観測で示された。
やっぱりサンプリングにはかないません。