ラマン散乱ライダー



 大気中分子の振動ラマン散乱や回転ラマン散乱を利用するライダー手法である22)。ラマン散乱によって分子の同定が可能であるが、ラマン散乱の断面積はレイリー散乱と比べて数桁小さいため、大気微量分子の測定への応用は難しい。ラマン散乱ライダーは水蒸気分布の測定や気温の測定に有効である。気温の測定では、窒素分子などの振動ラマン散乱を用いて大気密度を測定し、レイリー散乱ライダーと同様の解析により気温を求める方法と、回転ラマン散乱のスペクトルの強度分布から気温を求める方法がある。  ラマン散乱ライダーでは、微弱なラマン散乱光をミー、レイリー散乱と分離して測定する分光システムの設計が重要である。フランスで開発された回転ラマンライダー23)では、単一縦モードのQスイッチYAGレーザーの第二高調波を光源としている。大気構成分子(N2,O2)の回転ラマン散乱を干渉フィルターを用いて529.1 nmと530.4 nm の二つのチャンネルで受信し、その比より気温を求めている。  この他、大気主要分子のラマン散乱信号を用いて、高スペクトル分解ライダーの場合と同様に、エアロゾルの散乱係数を求める方法も利用されている24)


文献
22) H. Inaba: Laser monitoring of the atmosphere, Chap. 5, Splinger-Verlag (1976).
23) D. Nedeljkovic, A. Hauchecorne, and M.L. Chanin: IEEE Trans. Geosci. Rem. Sens. 31, 90 (1993).
24) V.M. Mitev, I.V. Grigorov, and V.B. Simeonov: Appl. Opt. 31, 6469 (1992).



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