差分吸収ライダー



 差分吸収ライダー(DIAL: Differential Absorption Lidar)は気体成分の測定手法である。エアロゾルや大気構成分子による散乱とレーザー光が散乱される場所までを往復する間に受ける測定対象分子の吸収の両方を利用する。測定では測定対象の吸収の大きな波長と吸収の小さい波長の2波長を用いる。吸収の大きな波長のライダー信号は吸収の小さな波長に比べて減衰が大きく、この2波長の信号の違いを解析することによって測定対象分子の濃度分布が求められる7)。近接する2波長の信号の比を取ることによって、エアロゾルの散乱などの未知のパラメータは打ち消される。

 DIALはオゾンや水蒸気などの大気微量成分や大気汚染気体の濃度分布の測定に有効である。DIALでは、測定対象分子の適当な強さの吸収線があること、測定対象以外の大気構成分子の吸収が小さいこと、また、大気から十分な後方散乱光が得られることが測定の条件となる。測定例を次章で示すように、色素レーザーなどの波長可変レーザーや、炭酸ガスレーザーなどの発振線と測定対象分子の吸収線の一致を利用してあらゆる可能性が研究されてきた。

 DIALの測定感度の限界は、ひとつには微弱な大気散乱を測定に用いる点にある。そこで、空間分解能は得られないが、ハードターゲット等を利用して長光路吸収測定を行なうことによって高い測定感度を得る方法もある。

文献
7) R.M. Schotland: Proc. 3rd Symp. on Remote Sensing of Environment, 215 (1964).



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